soomyaの成り上がり物語

そのうち大手歌い手兼トップユーチューバー兼プロゲーマーになります。

【オリジナル小説】雨の日の雨野のシャツpart2

桜井はクラスで人気者だった。
彼女は元気で活発的であったし、人当たりもよく友人も多いタイプだった。
だが、オタクのことは毛嫌いしており、アニメ好きの雨野とはあまり関りがなかった。
そして、少し抜けている部分もあって、そういうところが雨野は可愛いなと思っている節があった。
今日、彼女が雨でずぶ濡れになっており、遅刻寸前のところも抜けている性格のせいであろう。

席に着いた桜井はカバンからタオルを取り出すと、髪や腕なんかを拭き始める。
「マジ最悪~」
桜井の濡れっぷりは大したもので、プールに飛び込んできたのかってぐらいにはびしょ濡れだった。
というのも、桜井は通学の最中、強風によって傘が飛ばされてしまったのだった。
傘はかなり飛ばされ、桜井も走って追いかけたのだったが間に合わずさらに運の悪いことに川の中に落ちて行ってしまったのだ。
川に流されていく傘を眺めつつ、もう回収は不可能そうだなということを悟った桜井は少しでも濡れないようにと走って学校に向かうのだった。
時は戻って、教室。HRも終わりかけの頃。
雨野はあんまりにもじろじろと桜井の方を見るのは申し訳ないなとも思いつつ、つい桜井の方をちらちらと見てしまう。
桜井の濡れ方は服から水が滴っていて、地面に落ちているぐらいだった。
そして、雨野はそれを目にして少しの間凝視して目をそらした。雨野は赤面していた。
桜井は服が濡れすぎていて、中の下着が透けて見えてしまっていたからだ。
さすがに、これはまずいと思った雨野はHRが終わるとすぐに桜井に話しかけた。
「なあ、着替えは持ってきてないのか?随分と濡れてしまっているようだが。」
桜井は一瞬驚いたような顔をして
「わあ、びっくりした!あんた喋れるんだ?」
雨野はクラスではあまりしゃべらないほうだったし、まして桜井に話しかけたのはこれが初めてだった。
「今日は体育も無いから、ジャージも持ってきてないしー、着替え持ってないかも。。。」
すると、雨野は俺に任せろといった顔で、
「今日たまたま、一枚多くYシャツを持ってきていてな。よかったら貸してやる。このままでは風邪をひいてしまうし、横にビショビショの人間がいられると俺の周囲の
湿度が上がって不快だ。」
雨野は素直に言うことが苦手で、照れ隠しのために余計なことまで言ってしまう。
人付き合いが苦手で奥手な雨野にとって桜井に話しかけたことと着替えを貸すという提案が出来たことは奇跡に近いことで、余計なことを言ってしまったことを加味しても
雨野にしては凄まじい頑張りを見せていた。
「えー、きもいね?普通、喋ったこともない女子にそんなこと言う?でもまぁ、確かにこのままでも居られないしー、貸してもらおうかなぁ?いや、でもなぁ。
あんたそのシャツに変なものとか付けてないでしょうね。」
いまだ、思案中の桜井に雨野は
「言わない方がいいかと思ったが、その、下着も透けて見えてしまっている。このシャツは洗い立てだし、綺麗に畳んでいる。」
「きっも!まじきもい!見んな見んなばか!早くそれ貸して!」
そう言うと桜井は雨野の手からひったくるようにしてシャツを掴むと、自分のカバンも持って、足早に教室の外へと出て行った。
少しすると、一限目の授業が始まる前に桜井は帰ってきた。
そして、自分の席に着くと、
「ありがと。きもいけど、助かったよ。このシャツ洗濯して明日返すね。あ、あんたからこのシャツ借りてるってこと他の誰にも言わないでよね。
オタクのあんたとつるんでるって思われると恥ずかしいし、ましてあんたの服を着てるなんてみんなに知られたら私もう死ぬしかない。」
雨野は苦笑しながら
「分かったよ。誰にも言わないよ。ただ、俺の扱いがあまりにも酷すぎやしないか、、、?」
「あんたと会話してるってだけでもありえないんだから、当たり前でしょ?調子に乗んなよ。はい、もう話終わり。これ以上話かけて来ないでよね。」
そうすると、桜井は体を黒板の方に向けて会話を切り上げた。着替えを貸してあげた雨野には一見冷たすぎるようにも見えるがそのはずだった。
桜井はあまり雨野に見られたくなかったのだ。というのも、雨で服が濡れた際、かなりの時間服が濡れていたせいで浸水具合はシャツに留まらず、
中の下着まで濡れてしまっていた。一度は、この濡れた下着のままで過ごそうかとも考えた桜井だったが、それでは肌の感触が気持ち悪すぎるし、
また下着が透けて見えてしまうかも分からない。なので、桜井はカバンに入れておいた絆創膏で突起している部分を覆い、その上から雨野から借りたシャツを着ることに
していたのだった。桜井にとってそれはとても恥ずかしいことだったが、今日一日だけならなんとか乗り切れると踏んでいた。
雨野と長く会話して体を見られているといつかその事がバレるかもしれないと桜井は思って、やや一方的に話を切り上げたのだ。
雨野には悪いことをしたなと思いつつ、明日シャツを返す時にちゃんとお礼を言おうと決意した桜井だった。

体の向きを変え、黒板の方を向く。桜井の内心穏やかではない。なにせ、ノーブラで一日過ごすはめになることなんてもちろん初めてだったからだ。
他の誰かにバレませんように祈りながら、一限目の授業で使う教科書をカバンから取り出そうとする。その瞬間、さくらいはハッとした。
雨に濡れたせいでカバンの中の教科書まで濡れており、今開くとびりびりに破けそうだったからだ。
この濡れた教科書は最低でも一日は乾燥させるためにこのまま開かない状態で干しておかないとダメになってしまうということは明らかだった。
そうなってくるとつまり、横の席にいる雨野に教科書を見せてもらわなくてはいけなくなってくる。