soomyaの成り上がり物語

そのうち大手歌い手兼トップユーチューバー兼プロゲーマーになります。

雨の日の雨野のシャツpart4(最終回)

そうして、一悶着あった一時限目だったが、この出来事以外には特に大きな事件もなく授業終了のチャイムが鳴った。
その後の授業では桜井は雨野に教科書を見せてもらいながらノートを取ったりしていた。
教科書を見るために桜井が近寄って来て肩が触れ合いそうになるたびに雨野はドキドキして顔が赤くなったりそわそわしたりしていた。
雨野は女性慣れしておらず、元来シャイな性格なのだ。しかも、桜井が近くに来るたびシャンプーの匂いやら女の子特有の匂いがしてくるのだから思春期真っただ中の雨野にとってはなんとも落ち着かなかった。
しかも、桜井はノーブラなのだ。落ち着かなくなるのも頷ける。当人は雨野にバレていることには気づいていないのだが。
挙動不審な雨野が机の上からえんぴつや消しゴム落としてしまった回数は午前中の間で一度や二度ではなかった。
桜井も桜井で雨野がずっとこんな調子だったので、少しからかって見ても面白いかと思い、たまに肩を軽くぶつけてみたり、髪をかき上げたりしてみて雨野の反応を楽しんでいた。
雨野はそのたびに頭が沸騰してどうにかなりそうだった。
一見はたから見ると仲のいいカップルにしか見えないのだが、桜井はそのことに気づいていない。
どうすれば雨野の面白い反応を見れるかと考えることに集中していた。
そんなやりとりを繰り返しているとあっという間に午前中の授業が全て終了していた。

昼休みが始まって、各々がちりじりに、購買へ行くもの、食堂へ向かうもの、仲のいい友達と机をくっつき合わせるものと別れて行動を始めていた。
雨野はいつも一人でご飯を食べるいわゆるぼっち飯だったので、カバンから毎朝早起きして手作りしているお弁当を取り出そうとしていた。
そのとき、桜井が神妙な顔で声をかけてきた。
「おい、雨野。あんたがいつ私に服を貸してるってほかの奴らに言いふらすとも限らないんだから一緒にご飯食べるわよ。
あんたのこと監視するから。」
雨野は驚くのと、同時に桜井と一緒にご飯を食べれることが純粋に嬉しかった。
二つ返事で
「そんなことは決してしないけど、いいよ。俺なんかでよかったら。」
「じゃあ移動するわよ。ここだと目立つし、みんなにあんたと仲いいと思われたくもないし。」
そういうと桜井は自分のお弁当を持ってすたすたと歩いて行ってしまった。
雨野も置いていかれないように慌てて追いかける。
三階にある雨野達の教室を出て、桜井は階段を降りていく、雨野はどこへ行くんだろうと思いながらも桜井の後ろを一定の距離を保って付いていく。
一階まで降りてきて、校舎を出て、少し歩くと校舎と別校舎の間の道の片隅にやや古ぼけた木製の机と椅子があった。
こんなとこにこんな場所があったんだと雨野は少し驚いた。
「へー、こんな場所が。」
「たまに友達とここで食べるのよ。ほとんど人も来なくていいのよ?雨の日とかここで食べるとエモいし。」
雨野はエモいの言葉の意味は分からなかったが、たしかにここでご飯を食べるのはとても良いように思えた。
上には屋根もあったし、この日は雨が降っていたが、机も椅子も水で濡れていたりはしなかった。

机の片面は壁にくっついていて、椅子も長椅子が一つあるだけだったので、二人は自然と横並びになって座った。
桜井ももうこの頃には雨野に対するオタク嫌いからなる偏見も特に無くなっていた。
実は雨野を監視するためと言って、連れ出したのも口実で、本当はもう少しからかって楽しみたかっただけだったのだ。
二人はお弁当を取り出して、蓋を開ける。
「わー、あんたのお弁当めちゃくちゃ綺麗に並べれられてるじゃん。」
「早起きして作ってるんだ。」
「え、自分で作ってるんだ。すごいじゃん。まあ、わたしも自分で作ってるけど。」
「桜井のお弁当もその、なかなか美味しそうだな。」
雨野がそう言うと、桜井はしたり顔で
「シャツ貸してくれたお礼にこの卵焼き上げる。結構自信作なんだー~」
「え、いいのか。悪いな。でも申し訳ないから交換と行こう。ちょうど俺も卵焼きを作ってきているし」
そういうと二人はお互いの卵焼きを交換した。
そして雨野は早速桜井お手製の卵焼きを口に運ぶ。雨野が母親以外の女性の作ったお弁当を食べるのはこれが初めてだった。
「ん、この卵焼き、中にきんぴらごぼうが入っているのか、食感が楽しくていいな。うまい。俺も今度試してみよう。」
「ふふ~ん♪おいしいでしょー~?まー、きんぴらは昨日の夜ごはんの残りなんだけどね。えへへ。」
自分の卵焼きが褒められた桜井は上機嫌になり、雨野に対して使っていた言葉遣いもやや柔らかいものへとなっていた。
「雨野の卵焼きおいしー!明太子が入ってるんだこれ!?結構合うじゃん!」
「毎日自分で作っていると飽きてしまってな。最近は色々と試しているんだ。ちなみに昨日は納豆が入っていた。
味は、、、。今日でよかったな。」
納豆卵焼きの味がおいしくなかったのはいうまでもない。
そして、二人は卵焼きの交換をきっかけに他のおかずも色々と交換し始めるのだった。
「この唐揚げなんでまだサクサクなの!?朝揚げたやつでしょ!?」
「それには秘密があってな、、、。」
雨野は料理が上手だった。
「ふむ、このたこさんウインナー足がちゃんと8本あるのだな。」
「頑張ったんだー~!大変だったんだから感謝しながら食べてよね!」
そうして二人は色々とおかずを交換しながら、楽しい時間を過ごすといつのまにかにお弁当も食べ終わっていた。
「ご馳走様!あんたが料理上手だったなんて意外だったわ。また、おかず交換してやらなくもないわよ。」
「お褒めの言葉ありがとう。桜井のもなかなか美味しかったぞ。」
こうして、二人のおかず交換会?は終了した。
教室へ戻る際、行きの間は前後だった二人の立ち位置はいつのまにか横になっていた。
そして、その後、桜井はたびたび監視のためと称して、秘密の場所で雨野とおかず交換会を開くのだった。