soomyaの成り上がり物語

そのうち大手歌い手兼トップユーチューバー兼プロゲーマーになります。

雨の日の雨野のシャツpart3


さきほど、雨野との会話をなかば強引に切り上げたせいで決まりの悪い桜井だったが、背に腹は代えられるぬと、気持ちを切り替えることにしたのだった。
そして、雨野の方へと体を向けやや、恥ずかしがりながらも声を出す。
「あ、あのさ、雨野。悪いんだけどさ。」
絞り出すように声を出すも少し、言葉が突っかかってしまっう桜井。
この時の桜井は自分が下着を付けていないのが雨野にばれてしまうのではないかととても不安な気持ちを抱えながら話していたので、
話し方不自然になってしまっていた。
「ん?どうかしたか?」
明らかに普通ではない状態の桜井の声色を聞いて雨野は不審がりながらも目を合わせるように体を向けた。
「うん、あのね。雨のせいでカバンの中の教科書まで濡れちゃってて、多分これ開くと破れちゃうと思うから、教科書見せてもらえないかな?」
「そんなことか。もちろん、良いに決まっている。どれ、机をそっちの方に寄せるぞ?」
雨野はそう言うと自分の机を持って、桜井の机に寄せるように椅子を立ち上がった。
「!いや、いいよ!私が忘れたんだから私が机そっちの方に寄せるよ!」
これ以上雨野に迷惑を掛けたくなかった桜井は慌てて自分も立ち上がり、机を持って雨野の方へと机を移動させる。
しかし、そのとき教室の床がさっきまで桜井がビショビショだったせいでよく滑る状態になっていた。
慌てて立ち上がった桜井は濡れた床面に足を取られて、少しよろけてしまう。
運悪く、よろけた先に机を持った状態の雨野が立っていて、桜井はバランスを立て直そうと一度、机を手から離したのだったが、それでも勢い止まらず雨野にぶつかってしまった。
雨野はなるべく、桜井がけがをしないで済むように、とっさに桜井を支える体制を取っていた。
意外にも雨野は運動神経はかなりいい方だったのだ。
そして、桜井を受け止めた瞬間、慣れない感触が手から伝わってくるのを感じた。
雨野は突如、とても柔らかいものが手に触れ、ほんの刹那の間、頭が真っ白になったが、すぐさまに思考を切り替えると桜井の勢いを完全に殺すように肩の方を抱き止め、
無事桜井を立たせ直した。
「わ、ごめん!」
二人が言葉を発したのは同時だった。
桜井の方は失敗に失敗を重ねて、泣きっ面に蜂状態だったこともあってすぐさま謝罪の言葉が出た。
対する雨野もあの刹那の間に桜井がノーブラの状態であったことを理解し、そして、故意ではなかったにせよ胸を触ってしまったことを詫びた。
桜井はパニックのあまり雨野に胸を触られたことに関しては気づいていなかったのでなぜ謝られているのかは不思議だったが、
わざわざそれを言うのも変だなと思ってそこには触れなかった。
結局、机は二人の間の中点の位置に置いて、一冊の教科書を共有して見ることにした。
しかし、雨野の内心は穏やかではない。
雨野は桜井さんは自分の胸を触られて激怒しているに違いないと思っていたからだ。嫌われたに違いないとまで思っている。
それだけではない。オタクでアニメ好きな雨野とはいえ、三次元の女性に興味がないわけでは全くない。健全なただの高校生だ。
隣に、下着を身に纏っていない女子高生がいると思うと全くもって授業に集中することが出来なかった。
ゆえに、教師から指名され名前を呼ばれたことにも一瞬気づかなかった。
「雨野。この問いⅡの問題の答え、分かるか?」
雨野が正気を取り戻したのは、何も言わない雨野を不思議がって教室内のクラスメイトがちらちらと雨野を見始め、教室内が静まり返ってからだった。
脳内に残る言葉の羅列を整理し、言葉として理解できるようになってからようやく雨野は教師から答えを問われていることに気づいた。
雨野は慌てて、立ち上がった。
そして、教科書のその問題を探し始める。もちろん、問題を探し始めるところから答えようとしては遅すぎるのだが、そんなこといちいち気にしている余裕は雨野にはない。
そこで助け舟を出してくれたのはなんと桜井だった。
「ⅹ=√3y=√5」
ボソッと雨野しか聞こえないように桜井は囁く。
「はい。ⅹ=√3y=√5です。」
「正解だ。座っていいぞ。」
雨野はほっと胸を撫でおろし、席に座った。
「ありがとな。助かったよ。」
「珍しいじゃん。あんた、数学得意でしょ。」
雨野はなぜ、桜井が自分が数学が得意なことを知っていたのかと不思議がるのと同時に、なんだ桜井怒っていないじゃないかと安心した。
桜井も少し恩を返せた気がしてうれしかった。